振替休日と代休との違い、取得期限などの基本について解説

急な仕事が入ると、休日と労働日の振替が必要になることがあります。
この振替による休日には、「振替休日」と「代休」がありますが、新たな休みの日の設定を振替実施の前に行うか、後に行うかでどちらに該当するのかが異なります。

振替休日と代休のいずれであるのかによって割増賃金の率などが異なりますので、両者の違いをしっかり押さえておくことが必要です。

振替休日と代休との違いを弁護士が解説します。

振替休日とはなにか、取得期限はあるのか

振替休日とは、労働者が休日に出勤する代わりに、あらかじめ日時の違うほかの労働日を休日とするという制度です。

振替休日を行うために必要な要件は以下の通りです。

  1. 労働協約や就業規則で、業務上必要な場合は特定の休日を他の日に振り替えることができる旨規定する。これらの定めがない場合には、労働者の個別の同意を得る
  2. 振替休日の実施は、振替が必要な業務上の合理的必要がある場合に限る
  3. 使用者が振替休日の実施するに当たって、どの休みの日とどの労働日を振替えるのか指定する
  4. 振替休日をする場合は、休日と労働日の交換後も、週1回の法定休日(変形週休制の場合は、4週間を通じて4日以上の法定休日)が存在することが必要
  5. 遅くとも振替休日を実施する前日までに、当該労働者に振替の旨を、連絡する

なお、管理監督者など一部の方は、労働時間や休日に関する規定は適用されません。

参考:労働時間|厚生労働省 兵庫労働局

(1)休日と休暇の違いを把握しておこう

振替休日は休日を変更することですが、会社の休みは「休日」のほかに「休暇」があります。
では、「休日」と「休暇」は、どう違うのでしょうか。

休日は、もともと労働義務のない日に設定される休みのことを言います。
他方で、「休暇」は、本来は労働日であるにもかかわらず労働義務が免除される休みのことをいいます。

休暇には、年次有給休暇、特別休暇(夏季休暇など)、介護休暇などがあります。

(2)法定休日と法定外休日

休日に関しては、法定休日と法定外休日に分けることができます。

(3)法定休日

法定休日とは、労働基準法によって必ず設けなければならないとされている休日のことです。
労働基準法によって、原則として、雇用者は週に1日以上の休日を労働者に与えなければならず、この週1日の休日が法定休日となります(労働基準法第35条1項)。

会社によっては、「変形週休制」をとっているところもあります。これは、特定の4週間
を通じて4日以上の法定休日を与えればよいというものです(労働基準法第35条2項)。

(4)法定外休日

法定外休日は、所定休日ともいいます。
法定外休日とは、雇用者が任意で労働者に与える休日のことで、法定休日以外の休日のことをいいます。
例えば、週休2日制の会社であれば、いずれか1日が所定休日となります。

(5)法定休日と法定外休日の割増賃金の支払い

法定休日と法定外休日のいずれで労働したかによって、労働基準法上、割増賃金(残業代)の割増率が異なります。

※管理監督者など、一部の方は割増賃金(深夜労働に割増賃金を除く)の規定が適用されません。

残業の種類割増賃金が発生する条件(※1)割増率
時間外労働1日8時間・週40時間のいずれかを超えて労働(※2)。
(法定外休日の労働時間も含みますが、法定休日の労働時間は含ません。)
時間外労働が月60時間までの部分1.25倍以上
時間外労働が月60時間を超えた部分1.5倍以上(※3)
深夜労働22~5時の間の労働1.25倍以上
休日労働法定休日の労働1.35倍以上
重複する部分時間外労働が0時間を超えて月60時間までの部分と、深夜労働が重複する部分1.5倍以上
時間外労働が月60時間を超えた部分と、深夜労働が重複する部分1.75倍以上
(※4)
法定休日に深夜労働した部分1.6倍以上

※1 残業時間として認められるためには、「会社の指示によって労働させられた」ことが必要です。
※2 時間外労働の例外
常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作は除く)、保険衛生業、接客業については、週44時間を超えた労働
※3 次に該当する企業(中小企業、以下同じ)は、2023年3月末までは、最低の割増率は1.25倍となります。
・小売業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が50人以下
・サービス業:資本金5000万円以下または常時使用する労働者が100人以下
・卸売業:資本金1億円以下または常時使用する労働者が100人以下
・その他:資本金3億円以下または常時使用する労働者が300人以下
※4 中小企業では2023年3月末までは、最低の割増率は1.5倍となります。

振替休日と代休の違いは?

振替休日と代休は意味する内容が異なります。

(1)代わりの休みの日の設定が事前か、事後かに違いがある

振替休日とは、労働者が休日と定められた日に出勤する代わりに、「あらかじめ」設定される別の休日のことです。
これに対して、代休とは、労働者が休日と定められた日に労働した「後」、設定する別の休日のことです。

振替休日をする場合は、休日と労働日の交換後も、週1回の法定休日(変形週休制の場合は、4週間を通じて4日以上の法定休日)が存在することが必要ですが、代休の場合は、法定休日に労働をした後に、休日を与えなくとも労働基準法違反とはなりません。

(2)振替休日と代休とでは割増賃金に違いがある

振替休日と代休とでは割増賃金に違いがあります。

振替休日の場合、元・法定休日に働いても休日労働の割増賃金の支払い義務なし

振替休日が行われた場合、元・法定休日に労働しても、労働基準法上、休日労働の割増賃金(最低35%増し)は発生しません。
(元・法定休日の労働に対しても、休日労働の割増賃金を払うとの就業規則等、社内ルールがある場合は、別です)。

他方で、代休が行われた場合は、元・法定休日に労働した分に対しては、労働基準法上、最低35%増しとなる休日労働の割増賃金が発生します。

例えば、時給計算で基礎賃金1200円の従業員が、元・法定休日に8時間の労働をした場合は、振替休日と代休がなされたときとで、以下のとおり異なります。
※元・法定休日の労働により、時間外労働や深夜労働にはならないことが前提です。

振替休日:割増賃金は発生しません。
代休:1200円×割増率1.35×8時間=1万2960円以上の割増賃金が発生します。

このように振替休日と代休は労働日と休日が変更となる点は同じですが、元・法定休日に労働した場合は、賃金では大きな違いが生じることがあります。

(3)振替休日でも時間外労働や深夜労働の割増賃金の支払い義務があることも

振替休日をした場合、元・休日に働いたことにより、時間外労働や深夜労働となる場合には、労働基準法上、割増賃金の対象となります。
労働基準法では「原則1日8時間または週40時間を超えて行わせた勤務」に対して時間外手当として、原則25%以上の割増賃金の支払いを義務付けています。
一般的に週休2日で1日8時間の労働としている会社が多いですが、振替休日をした元・休日に労働すると「週40時間」を超えることがあります。
例えば、土日を休日とする週休2日、日曜日が法定休日、1日8時間の労働としている会社の場合、月から金で8時間×5日=40時間となりますので、さらに、土曜日を労働日に振り替えて翌週の月曜日を振替休日とした場合は、土曜日に働いた分が原則として時間外労働となり、25%以上の割増賃金の支払いが必要となります。
(土曜日に働いた分が深夜労働の場合には、深夜労働の割増賃金の支払いとなります。)

【まとめ】振替休日のことでお困りの方は弁護士へ相談することをおすすめします

振替休日はあらかじめ特定の休日と労働日を交換するもので、元・法定休日に労働しても休日労働にはなりません。
ただし、振替休日をした場合、元・休日に働いたことにより、時間外労働や深夜労働となる場合には、労働基準法上、割増賃金の対象となります。
振替休日のことでお困りの方は弁護士や、各都道府県労働局・全国の労働基準監督署内に設置されている「総合労働相談コーナー」などへ相談しましょう。

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

この記事の監修弁護士
髙野 文幸
弁護士 髙野 文幸

弁護士に相談に来られる方々の事案は千差万別であり、相談を受けた弁護士には事案に応じた適格な法的助言が求められます。しかしながら、単なる法的助言の提供に終始してはいけません。依頼者の方と共に事案に向き合い、できるだけ依頼者の方の利益となる解決ができないかと真撃に取り組む姿勢がなければ、弁護士は依頼者の方から信頼を得られません。私は、そうした姿勢をもってご相談を受けた事案に取り組み、皆様方のお役に立てられますよう努力する所存であります。

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